はじめに
民泊や一棟貸し宿のために物件を探していると、「結局現地で何を見ればいいのか」が分からないまま内見を終えてしまうことがあります。
ネット上には「古民家がいい」「立地が大事」といった抽象的な情報はたくさんありますが、実際に現地で何をチェックすればいいのか、部屋のどこを見るのか、立地のどこを評価するのか、価格は何を基準に判断するのか、という実務的な観点を具体的に示している情報は意外と少ないものです。
結論を先に言うと、物件を見る際は「部屋・建物」「立地」「価格」「民泊・一棟貸し宿にした時の強み」「DIYできる場所」という5つの観点を、必ず同じ物件に対してセットで確認することが大切ではないかと思っています。
どれか一つだけが良くても、他の観点で無理があると、開業後の運営に支障が出ます。
この記事でわかること
・立地で見るべき要素と評価の仕方
・価格が適正かどうかを判断する視点
・民泊・一棟貸し宿にする際に強みになりやすいポイント
・DIYで対応できる場所・できない場所の見分け方
法律・許可・補助金に関する内容は地域や時期によって異なるため、本記事では一般的な傾向のみを扱います。実際に進める際は必ず管轄の自治体・保健所に確認してください。
見る順番が大事

物件を見るときは、思いつきで部屋や設備を見るのではなく、以下の順番でチェックすると判断がブレません。
- 立地(そもそも事業として成立するエリアか)
- 部屋・建物の状態(改修してでも使える建物か)
- 価格(改修費用込みで見て妥当か)
- 民泊・一棟貸し宿としての強みになる要素があるか
- DIYできる場所があるか(コストを抑えられる余地)
立地で事業として成立しないと判断できれば、その時点で他の項目を細かく見る必要がなくなります。逆に立地が良ければ、部屋の状態や価格は改修・交渉でカバーできる場合があります。
部屋・建物で見るべきポイント

- 部屋数と部屋の広さ(何人まで泊められる構成になっているか)
- 天井の高さ、梁の見え方(古民家であれば梁や柱がそのまま魅力になる場合がある)
- 採光(窓の数・向き、日中の明るさ)
- 水回りの状態(キッチン・浴室・トイレの配管・劣化状況)
- 床・壁・屋根の傾き、雨漏りの跡、基礎の状態
- 断熱・気密の状態(冬場の使用を想定する場合は特に重要)
- 電気・ガス・水道の容量(一棟貸しで複数人が同時に使う前提の設備容量があるか)
水回りと基礎・屋根の状態は、見た目では分かりにくく、後から改修費用が大きく膨らみやすい部分です。可能であれば内見時に床下や屋根裏を見せてもらう、専門家に同行してもらうといった対応が安全です。
特に私が大事だと思う部分は、「収容人数」と「水回り」です。
収容人数が多ければ一回の単価を上げられるため、利益を上げやすいということ。
一棟貸し切りで運営する場合、おひとり様やカップルがターゲットよりも、グループ利用のほうが料金を上げられます。
また、水回りは特に気になるお客様が多いと思います。DIYするのも少し難易度が高く、改修工事する場合も費用が嵩む部分になるので、要チェックポイントだと思います。
立地で見るべきポイント

- 最寄りの駅・高速道路からのアクセス(車での移動時間)
- 駐車場の有無・台数(一棟貸しは車での来訪が多い)
- 周辺の景観(山・川・田園風景など、宿の世界観に関わる要素)
- 近隣との距離感(音やプライバシーへの配慮が必要な距離か)
- 周辺の競合施設の有無と価格帯
- 最寄りのコンビニ・スーパーまでの距離(ゲストの利便性)
- 携帯電話の電波状況、インターネット環境
立地は後から変えられない要素なので、部屋の改修よりも優先して判断すべき項目です。景観や近隣との距離感は、写真だけでは分かりにくいため、実際に複数の時間帯で現地に行ってみることをおすすめします。
立地について細かく見ると、「観光地でなければならない」ということはありません。もちろん、「海が見える」とか「温泉が近い」とか「ICが近い」などはかなり強みになりますが、こうした「立地的な強み」がなくても宿運営は成り立つものだと考えています。
つまり、「宿としての強み」を打ち出すことができればその宿に泊まりたいと思ってもらえることができれば立地は関係ないということです。
「立地」として、特にこれは必要だと感じるポイントは「駐車場」です。宿の敷地内に駐車スペースがあるのが理想的。なければ近隣に借りる形になります。借りる場合は1台何円という形になることが多いと思うのですが、そうすると毎月の固定費もかかってきます。田舎でする場合は車での来訪になるので、駐車スペースを確保できるか要チェックです。
価格が適正かどうかを判断するポイント

物件価格そのものだけでなく、以下を含めたトータルコストで判断することが重要です。
- 物件取得費用(購入価格、または賃借の場合の初期費用)
- 想定される改修費用(水回り・内装・外構・消防設備など)
- 取得後にかかる固定費(固定資産税、保険料など)
- 同エリア・同条件の物件相場との比較
「物件価格が安い」というだけで判断すると、改修費用がかさんで結果的に割高になるケースがあります。逆に物件価格が高くても、改修がほとんど不要であれば総コストは抑えられる場合があります。
民泊・一棟貸し宿にする際に強みになりやすいポイント

物件を見る際は、欠点だけでなく「強みになる要素」も意識して見ることが大切です。個人的にはここが一番大事なポイントではないかと思っています。
- 縁側・土間・囲炉裏など、古民家特有の空間
- 蔵・納屋など、サウナや特別な体験コンテンツに転用できる別棟
- 庭・畑など、屋外で過ごせるスペース(農園体験やBBQができるなど)
- 景観(山・星空・川など、周辺環境込みの体験価値)
- 建物自体のストーリー(築年数、地域での役割、改修の経緯など)
これらは数字には表れにくいものの、競合の宿との差別化や、SNS・写真での訴求力につながりやすい要素です。物件を見る際は、欠点のチェックだけでなく「ここをどう使えば強みになるか」という視点も持つようにしています。
たとえば、私の宿は「立地の強み」はありませんが、「蔵サウナ」「屋外BBQスペース」「駐車4台可能」「収容人数10人」「完全貸切」という強みや差別化を図ることができていると思います。また、ほかにも未活用の蔵があり、現在そこはカフェスペースへと改装工事中です。
周辺地域の宿と比較して、ほかにない強みを打ち出すことができればかなり集客にも繋がりやすくなるのではないかと思います。
DIYできる場所・できない場所の見分け方

すべてを業者に依頼すると改修費用が大きくなるため、DIYできる場所を見極めることはコストを抑える上で重要です。
DIYで対応しやすい場所の例
- 壁の塗装、壁紙の張り替え
- 庭・外構の整備
- 家具・建具の製作や塗装
- 棚や収納など造作の一部
専門家への依頼が必要になりやすい場所の例
- 水回り(配管・給排水設備)
- 電気工事(配線・分電盤)
- 構造に関わる部分(柱・梁・基礎)
- 消防設備・防火に関わる部分
物件を見る際は、「ここは自分で手を入れられそうか」という視点で各部屋・各設備を見ておくと、改修計画と予算配分がイメージしやすくなります。蔵や納屋などの別棟がある場合は、DIYの作業スペースとしても活用しやすいポイントです。
もちろん、工具や作業に必要な道具を揃える大変さもありますが、塗装の仕方や壁の作り方、床の貼り方など覚えておけば、次もDIYで修繕して新たに宿の運営を回すことも可能になってきます。大変ではありますが、私はDIYで直せる部分は自分でするほうがコスパもよく、スキルにもあるのでおすすめしたいと思っています。
よくある失敗
失敗1:立地を軽視して建物の魅力だけで判断してしまう
建物が魅力的でも、アクセスが悪すぎる、駐車場が確保できない、近隣との距離が近すぎるといった立地上の問題は、後から改善することが難しい部分です。建物に魅力を感じた時点で立地の評価が甘くなり、契約後に集客面で苦労するケースがあります。
失敗2:大きすぎる古民家にしてしまう
私が持っている古民家は2階建てですが、2階部分の大半をうまく活用できていません。将来的にうまく利用できればいいと思っていますが、改装するとなると結構な費用になると思われるので手が付けられない状態です。大きすぎると改修に時間とお金がかかるので、気をつけてください。
FAQ
Q1:物件を見る際、一人で判断しても大丈夫ですか? 建物の状態(基礎・屋根・水回りなど)については、専門知識がないと判断が難しい部分が多いため、可能であれば建築士や大工など専門家に同行してもらうことをおすすめします。立地や強みになる要素については、自分自身の事業イメージと合わせて判断する部分が大きいため、一人で見るより複数人の視点を入れた方が判断の精度が上がります。
Q2:内見は何回くらい行くべきですか? 立地や雰囲気は時間帯や天候によって印象が変わるため、可能であれば日中・夕方など複数の時間帯で訪れることをおすすめします。気になる物件であれば、契約前に複数回訪問しておくと、判断材料が増えます。
まとめ
民泊・一棟貸し宿の物件探しでは、部屋・建物、立地、価格、強みになる要素、DIYできる場所、こうしたポイントを押さえてみていきましょう。特に立地は後から変えられない要素のため、建物の魅力だけで判断せず、優先して評価することをおすすめします。
