地方移住で空き家や古民家を探し始めると、物件価格の安さに目が行きがちです。
「200万円の物件があった」「タダ同然で売られている家がある」——そんな情報を目にして、移住の現実味が増してきた方も多いと思います。
ただ、問題はそこから先です。
実際に空き家を購入するとき、物件価格以外に何をいくら払う必要があるのか。
これが把握できないまま動いてしまうと、「予算オーバーで立ち往生」という事態になりかねません。
結論:物件価格だけで判断すると失敗しやすい

結論から言うと、地方の空き家・古民家を購入する場合は、物件価格の1.5〜3倍程度の予算を見ておくと現実的です。
例えば200万円の物件でも、
登記費用
不動産取得税
リフォーム費用
浄化槽や水道などのインフラ整備費
が発生し、総額400〜700万円程度になることも珍しくありません。
空き家購入で重要なのは「いくらで買えるか」ではなく、「総額でいくら必要になるか」を把握することです。
この記事では、空き家・古民家の購入にかかる諸費用を項目ごとに一覧で整理します。「総額でいくら必要か」のイメージが持てるよう、目安額と注意点もあわせて解説します。
この記事でわかること
費用の目安額(あくまで参考値)
費用が膨らみやすいポイントと失敗回避策
自分の予算で動けるかどうかの判断基準
空き家購入の費用全体像

まず全体像を整理します。
| 分類 | 主な内訳 | 特徴 |
| ①購入時の取引費用 | 仲介手数料・印紙税・ローン費用など | 購入決定から決済までに発生 |
| ②登記・法務費用 | 所有権移転登記・司法書士報酬 | 決済時に支払い |
| ③購入後の税金 | 不動産取得税・固定資産税 | 購入後数ヶ月〜1年以内に発生 |
| ④修繕・整備費用 | リフォーム・設備更新・インフラ整備 | 入居前後に発生、最も金額が読みにくい |
①〜③は比較的見積もりやすい費用です。問題は④で、ここが空き家購入の費用計画で最もつまずきやすいポイントになります。
①購入時の取引費用
仲介手数料
不動産会社を通じて購入する場合、仲介手数料がかかります。
法律で上限が定められており、売買価格が400万円超の場合は「売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税」が上限です(2025年時点の一般的な解釈。制度変更の可能性があるため、必ず最新の情報を確認してください)。
空き家バンク経由の物件で、自治体が仲介に関わるケースでは、仲介手数料が通常より低額になる場合があります。
ただし自治体によって対応が異なるため、必ず事前に確認してください。
印紙税
売買契約書に貼付する収入印紙の費用です。売買価格によって金額が変わります。
| 売買価格 | 印紙税額(軽減税率適用時・参考値) |
| 100万円超〜500万円以下 | 1,000円 |
| 500万円超〜1,000万円以下 | 5,000円 |
| 1,000万円超〜5,000万円以下 | 1万円 |
※軽減税率の適用条件・期間は変更される場合があります。国税庁の最新情報を確認してください。
住宅ローン関連費用(ローン利用の場合)
ローンを利用する場合、以下の費用が発生します。
- ローン事務手数料:金融機関によって異なる。定額(3〜5万円程度)または融資額の1〜2%
- ローン保証料:保証会社に支払う費用。不要な金融機関もある
- 団体信用生命保険料:金利に含まれるケースが多い
- 火災保険料:金融機関から加入を求められることが多い
ただし、築年数の古い空き家・古民家は住宅ローンの審査が通りにくいケースがあります。「フラット35」の築年数要件、リフォーム一体型ローンの条件なども事前に確認が必要です。
②登記・法務費用

所有権移転登記費用
不動産の名義を自分に変更するための登記手続きです。
費用は2種類あります。
登録免許税(国に納める税金)
- 土地:固定資産税評価額 × 1.5%(軽減税率適用時の参考値)
- 建物:固定資産税評価額 × 2%(一般的な場合の参考値)
※固定資産税評価額は物件の市場価格よりも低く設定されることが多い。ただし古い空き家では評価額が想定より高い場合もある。
司法書士報酬
- 目安:5〜15万円程度(物件の状況・依頼する事務所によって異なる)
抵当権抹消登記
売主側に住宅ローン残債がある場合、抵当権抹消の手続きが必要です。費用は売主側が負担するのが原則ですが、契約内容によって異なります。
表題登記・建物登記の注意点
古い空き家では、登記情報が古い・未登記建物がある・増築部分が未登記といった問題が生じやすい。この場合、土地家屋調査士への依頼が必要になり、追加費用(数十万円)が発生することがあります。
③購入後の税金
不動産取得税
不動産を取得した際に一度だけかかる税金です。
原則的な計算式(参考)
- 土地・建物ともに:固定資産税評価額 × 4%
ただし、住宅用途や一定の要件を満たす場合は軽減措置が適用される場合があります。軽減の内容・要件は都道府県によって異なります。購入する物件が所在する都道府県の税務署または自治体へ確認してください。
注意点:購入後数ヶ月〜半年後に納付書が届くため、購入直後の費用として意識から抜け落ちがちです。
固定資産税・都市計画税
毎年かかる税金です。1月1日時点の所有者に課税されます。
目安:固定資産税評価額 × 1.4%(固定資産税)+ 0.3%(都市計画税、市街化区域の場合)
地方の古い空き家では評価額が低く、年間数万円以下のケースも多いですが、土地の評価によっては想定より高い場合もあります。
購入前にインスペクション(建物調査)をおすすめする理由
空き家や古民家は、見た目だけでは建物の状態を判断できません。
実際には、
- 雨漏り
- シロアリ被害
- 基礎のひび割れ
- 建物の傾き
- 給排水設備の劣化
- 屋根裏や床下の腐食
などが隠れていることがあります。
こうした問題は購入後に発覚すると数十万〜数百万円単位の追加費用につながることもあります。
購入前にホームインスペクターや建築士による建物調査を依頼しておけば、大きなリスクを把握したうえで購入判断ができます。
調査費用は一般的に5〜10万円程度ですが、数百万円の失敗を防ぐための保険と考えると十分に価値のある投資です。
④修繕・整備費用(最重要)

空き家購入で費用が読みにくいのはここです。物件価格が安くても、修繕費が数百万〜1,000万円を超えることがあります。
リフォーム・修繕費
状態によって大きく異なります。目安の参考として:
| 工事の範囲 | 目安費用(参考) |
| 内装(クロス・床張り替えなど)のみ | 50〜200万円程度 |
| キッチン・浴室・トイレの設備交換 | 100〜300万円程度 |
| 屋根・外壁の修繕を含む | 200〜500万円程度 |
| 耐震補強を含む大規模リフォーム | 500万円〜(上限なし) |
これらはあくまで参考値です。建物の状態、地域の業者の状況、材料費によって大きく変動します。
・壁紙張替え:数十万円
・床張替え:数十万円
・塗装工事:数万円〜数十万円
かかることもあります。
一方で、これらはDIYしやすい工事でもあります。
私自身も古民家の改修でDIYを活用しましたが、工事内容によっては費用を大幅に抑えることができました。
ただし、電気工事や給排水設備工事など資格が必要な工事もあるため、安全性や法令面を考慮して専門業者へ依頼する部分との切り分けが重要です。
インフラ整備費用
地方の空き家では、以下のインフラが整っていないケースがあります。
- 浄化槽の設置・交換:合併浄化槽の新規設置は50〜100万円程度。補助金が使える場合もある(自治体によって異なる)
- 井戸・水道引き込み:水道本管から離れている場合、引き込み工事に数十〜100万円超になることも
- 電気・ガスの引き込み・容量変更:プロパンガスエリアか都市ガスエリアかで設備費が変わる
- 給排水管の交換:古い配管は交換が必要なケースがある
これらは購入前の現地確認と専門家の事前調査が不可欠です。
解体・撤去費用
物件によっては、既存の廃棄物や残置物の撤去、古い倉庫・小屋の解体が必要な場合があります。
- 残置物の処分:数万〜数十万円
- 付属建物の解体:規模によるが数十〜百万円超
費用の総額イメージ
あくまで参考として、3つのパターンを示します。数字は一般的な目安であり、実際の費用は物件・地域・状態によって大きく異なります。
| パターン | 物件価格 | 取引・登記費用 | 税金 | 修繕費 | 総額目安 |
| 軽度修繕で住める物件 | 200万円 | 15〜30万円 | 数万円〜 | 100〜200万円 | 約320〜430万円 |
| 中程度のリフォームが必要 | 300万円 | 20〜40万円 | 数万円〜 | 300〜500万円 | 約620〜840万円 |
| 大規模修繕・インフラ整備含む | 100万円 | 15〜30万円 | 数万円〜 | 800万円〜 | 約900万円〜 |
「物件が安いほど総額も安い」とは限りません。むしろ格安物件ほど修繕費が高額になるケースがあります。
費用を抑えるために使える制度・補助金
自治体によっては、空き家購入・改修に対する補助金・助成金制度があります。
- 移住促進の補助金
- 空き家改修補助金
- 浄化槽設置補助
- 耐震改修補助
ただし、制度の内容・条件・金額は自治体によって大きく異なり、年度ごとに変更される場合もあります。移住を検討している自治体の窓口や移住・定住支援担当に直接問い合わせるのが最も確実です。
よくある失敗
失敗①:修繕費を「なんとかなる」で進めて予算オーバー
物件価格が安いと、つい修繕費の見積もりを後回しにしがちです。購入前に建物の状態を専門家(建築士・ホームインスペクター)に診てもらわずに進めると、入居直前に想定外の費用が発生します。購入前のインスペクション(建物調査)は数万円の費用がかかりますが、それ以上の「見逃し」を防ぐ投資と考えてください。
失敗②:インフラの確認を後回しにした
「水道が引き込めない」「浄化槽が老朽化していて全交換が必要」といったインフラ問題は、現地を見ただけでは分かりません。購入前に水道・下水・電気の状況を自治体や業者に確認し、費用が発生する場合は見積もりを取ってから購入判断をすることが重要です。
失敗③:補助金を期待して計画を立てたが対象外だった
「補助金があると聞いていたが、自分の物件は対象外だった」というケースは少なくありません。補助金の条件(築年数・建物の種類・世帯の条件など)は細かく設定されています。補助金ありきで予算を組まず、補助金は「あれば助かる」程度に位置づけておくことをすすめます。
チェックリスト:空き家購入前に確認すること
☐仲介手数料の金額を事前に書面で確認した
☐住宅ローンの審査可否・利用条件を金融機関に確認した
☐登記状況(未登記・増築部分)を確認した
☐インスペクション(建物調査)を依頼した
☐水道・浄化槽・電気の状況を確認した
☐修繕費の概算見積もりを取った
☐自治体の補助金・支援制度を確認した
☐不動産取得税の納付時期と金額の目安を把握した
☐残置物・付属建物の撤去が必要か確認した
☐総額(物件+諸費用)を計算した
まとめ
空き家を探していると、つい「物件価格の安さ」に目が行きます。
しかし実際には、
・建物の状態
・水回りの状態
・インフラの状況
・修繕費
の方が総額へ与える影響は大きいです。
私なら、100万円安い物件よりも、修繕費が300万円安く済む物件を選びます。
空き家購入で失敗しないためには、「購入価格」ではなく「総額」で比較することが大切です
FAQ
Q1. 空き家バンクの物件は、仲介手数料がかからないのですか?
空き家バンクはあくまで物件情報の紹介窓口であり、実際の売買契約は不動産会社が仲介するケースがほとんどです。その場合、通常通り仲介手数料が発生します。ただし自治体によっては仲介手数料を一部補助する制度がある場合もあるため、利用する自治体の担当窓口に確認してください。
Q2. 格安物件(50万円以下)でも諸費用はかかりますか?
はい、かかります。むしろ格安物件は修繕が必要な状態であることが多く、修繕費が物件価格の数倍〜数十倍になるケースもあります。「物件が安い=全体の費用が安い」とは限らないため、物件価格ではなく総額で判断することが重要です。
Q3. 購入後すぐにリフォームせず、住みながら直す方法は現実的ですか?
状況によっては可能ですが、水まわり(トイレ・台所・浴室)が使える状態でないと生活自体が成り立ちません。最低限の設備が機能するかどうかを購入前に確認し、「住みながら直せる状態か」を見極めることが先決です。住みながら直す場合、工事の順番・費用の分散計画も重要になります。
Q4. 空き家購入で住宅ローンは使えますか?
使える場合もありますが、築年数が古い・建物の状態が悪い物件はローン審査が厳しくなる傾向があります。フラット35やリフォーム一体型ローンを検討する場合は、購入前に金融機関や住宅金融支援機構に相談することをすすめます。
Q5. 登記が複雑な物件(相続未登記・共有名義など)はどうなりますか?
売主側の登記手続きに時間がかかり、購入までのスケジュールが延びることがあります。また、相続関係者が多い場合は売買手続きが複雑になります。こうした物件を検討する際は、司法書士に事前相談することをすすめます。
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