はじめに:「田舎だから人が来ない」は本当か
地方移住して事業を始めたいと考えたとき、多くの人が最初に感じる不安が「集客できるのか」という問題です。
「都市部から離れたら、そもそも人が来ないのでは」「SNSをやっていても地方のお店は埋もれてしまうのでは」——こうした不安は当然です。実際、地方移住後に事業を開始して、1〜2年で撤退するケースの大半は、立地や物件の問題ではなく、集客の設計ができていなかったことが原因です。
結論から言うと、地方の事業でも集客は十分できます。ただし、都市部と同じやり方は通用しません。
地方で事業を軌道に乗せるには、「通りがかりの集客」ではなく「わざわざ来てもらう集客」に切り替えることが大前提です。
キャンプ場・古民家宿・カフェのいずれも、正しい順番で集客の仕組みを作れば、安定した予約・来客を得ることができます。
この記事では、実際にキャンプ場・古民家宿を運営している私の実体験を踏まえて、以下の内容を解説します。
・キャンプ場・古民家宿・カフェそれぞれの集客の考え方
・SNS・予約サイト・リピーター設計の具体的な進め方
・よくある失敗と対策
・チェックリスト・FAQ
地方事業の集客が難しい理由と全体像

なぜ地方の集客は難しいのか
都市部の飲食店や宿泊施設と比較すると、地方事業の集客には構造的な違いがあります。
認知される機会が限られる:地元の口コミだけでは広がりに限界がある
競合が少ない代わりに市場も小さい:地元だけをターゲットにすると頭打ちになりやすい
逆に言えば、地方には強みもあります。「わざわざ来る理由になる体験」が作りやすく、SNSでの拡散力が高い非日常感を提供できます。
都市部では難しい「その場所にしかない体験」で差別化できることが、地方事業最大の武器です。
集客の全体設計

地方事業の集客は、以下の3つのフェーズで考えます。
検討・予約フェーズ(選んでもらう) ウェブサイト・口コミ・写真・料金情報で「行ってみたい」と思わせる。
リピート・口コミフェーズ(また来てもらう・広めてもらう) 体験の質を高め、再来訪・紹介につなげる。
多くの場合、①に力を入れすぎて②③の設計が甘くなります。特に地方事業は「来てもらえれば満足度は高い」ケースが多いので、②③に投資することが長期的な集客安定につながります。
キャンプ場の集客:予約サイト×SNSの組み合わせが基本

予約サイトへの登録が最初のステップ
キャンプ場の集客において、まず取り組むべきは予約サイトへの掲載です。
「なっぷ」などのキャンプ特化型のサービスへの登録は必須です。
なかでも、なっぷはキャンプをする方なら、一度は見たことがあると思います。
キャンプを計画するユーザーの多くは、エリアや設備条件で検索します。
予約サイトに掲載されていなければ、そもそも候補に入りません。
掲載時に重要なのは以下の3点です。
設備・ルールの明記:ゴミ捨て、直火の可否、ペット可否など、判断材料になる情報を網羅する
料金の透明性:オプション料金や追加費用を明確に記載する
当初、自社HPのみでの集客にこだわっていました。
直接施設の情報を見て、価値観に共感してくださる方に来ていただきたいという思いがあったからです。
そのため、予約サイトへの掲載には少し慎重でした。
しかし開業3年目頃、より多くの方に知っていただく必要性を感じ、「なっぷ」への掲載を開始しました。
キャンプ場を探している方が集まるサイトというだけあり、予約数は倍増し、集客効果は大きいと感じています。
SNSはInstagramとX(Twitter)の使い分け

キャンプ場のSNS集客では、Instagramが最も効果的なプラットフォームです。
キャンプは視覚的な体験であり、「こんな景色の中でキャンプができる」という写真・動画は強い訴求力を持ちます。
・季節感を出す(紅葉、雪景色、新緑など)
・キャンプ客が撮った写真をリポストする(許可を得たうえで)
X(旧Twitter)は、キャンセル情報や直前の空き状況告知に向いています。急なキャンセルが出たときにXで告知するだけで、当日予約が埋まるケースがあります。
これはあくまで私自身の経験ですが、キャンプ場や宿の集客に関しては、X(旧Twitter)よりInstagramのほうが相性が良いと感じています。
理由は、施設の写真や過ごし方を伝えることで、利用前のイメージを持ってもらいやすいからです。
「投稿が伸びる=予約が増える」ではなく、実際に来たいと思ってくれる人に届くことのほうが重要だと感じています。
キャンプ場集客のよくある失敗
失敗①:写真の質が低く、予約サイトで選ばれない
スマートフォンで撮った暗い・ぼやけた写真では、他サイトとの比較で見劣りします。晴れた日の午前中に撮影し直すだけで予約率が変わります。
失敗②:オフシーズンの集客を考えていない
夏に集中する予約を当てにしてキャッシュフローが悪化するケースは多いです。冬キャンプ需要の取り込みや、BBQイベントなどシーズン外の企画を検討しましょう。
古民家宿の集客:「体験」を売る設計にする

古民家宿は「泊まる理由」が重要
古民家宿の集客で最も大切なのは、「なぜそこに泊まるのか」を明確にすることです。
宿泊施設の比較サイト(じゃらん・楽天トラベル・airbnbなど)に掲載することは基本ですが、価格競争には巻き込まれやすいという側面があります。
古民家宿が勝負すべきポイントは「価格」ではなく「体験価値」ではないかと思っています。
体験価値として打ち出せる要素の例:
地元の食材を使った食事・料理体験
周辺の自然体験(農業体験、山歩き、川遊びなど)
地域の文化・祭りとの連携
これらを「宿泊+体験」としてパッケージ化することで、比較されにくいポジションを作れます。
掲載プラットフォームの選び方
古民家宿の場合、以下のプラットフォームを目的別に使い分けると効果的です。
| プラットフォーム | 特徴 | 向いているケース |
| じゃらん・楽天トラベル | 集客力が高い・手数料あり | 認知拡大・初期集客 |
| Airbnb | 外国人旅行者・個性的な宿に強い | 古民家の独自性を訴求したい場合 |
| 自社予約サイト | 手数料ゼロ・直接関係構築 | リピーター獲得・長期的な収益改善 |
初期は既存プラットフォームで集客し、徐々に自社サイト予約の比率を高めていくのが基本的な流れです。
リピーター設計が古民家宿の核心

古民家宿は、1度来た人をいかにリピーターにするかが収益安定のカギです。
リピーターを生む仕組みの例:
・季節ごとに変わるイベントや食事を告知する
・「特典」(早期予約割引、部屋のアップグレードなど)を設ける
私が運営している古民家宿の特徴は、「大人数で貸切利用できること」と「宿泊中の過ごし方まで楽しめる設備があること」だと考えています。
最大10名まで宿泊できる一棟貸しのため、家族旅行や友人グループなど、周囲を気にせず過ごしたい方に向いています。
また、築140年の古民家を活用したサウナや、無料で利用できるBBQセットなど、宿泊だけではなく滞在中の体験も提供しています。
周辺には10名規模で完全貸切できる宿泊施設が少なく、「大人数で気兼ねなく楽しめる場所」という点が、この宿の大きな特徴になっています。
古民家宿集客のよくある失敗

失敗①:写真・説明文が宿の魅力を伝えられていない
「古民家」という言葉だけでは伝わりません。築年数、建築様式、改修のこだわり、どんな時間を過ごせるかを言葉と写真で具体的に伝えましょう。
失敗②:一度来た客へのフォローをしていない
宿泊後に何もアクションをしないのはもったいない。簡単なお礼メール+次回予約の誘導を入れるだけで、リピート率は変わります。
地方カフェの集客:エリア集客×SNSの掛け算
地方カフェはGoogleマップが集客の基盤
地方カフェの集客で、最初に整備すべきは**Googleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)**だと言われています。
「〇〇市 カフェ」「〇〇IC カフェ」といった検索で上位に表示されることが、地方カフェへの来客の大きな経路になります。登録・整備にかかる費用は無料です。
整備のポイント:
・写真を定期的に追加する(外観・内装・メニュー)
・口コミへの返信を必ず行う
SNSはInstagramとGoogleマップのセット運用
地方カフェにおいて、Instagramは「行ってみたい」という気持ちを高める役割があると考えています。
Googleマップでお店を知り、Instagramで店内の雰囲気やメニューを確認してから来店する、という流れを作ることが重要です。
発信内容としては、以下のような優先順位で考えています。
→ 新しい情報は反応されやすく、来店のきっかけになります。
2.店内の雰囲気・こだわりの内装
→ 実際に訪れた時のイメージを持ってもらいやすくなります。
3.店主の日常や考え方を伝えるストーリーズ投稿
→ 店舗への親近感や継続的な接点につながります。

私自身、現在、古民家の隣にある蔵を改装し、飲食スペースとして活用するカフェづくりを進めています。
このカフェは、単独で集客するだけではなく、運営している古民家宿の付加価値としての役割も持たせたいと考えています。
宿泊された方が滞在中に立ち寄れる場所を作ることで、満足度を高め、再訪につなげることが目的です。
また、周辺のスキー利用者やキャンプ場利用者にとっても、移動途中に立ち寄れる場所になればと考えています。
まだ本格的な集客段階ではありませんが、現在は蔵の改装過程やDIYの様子をSNSで発信し、完成までの過程を知っていただくことで、開業前から興味を持っていただけるよう取り組んでいます。
地方カフェのよくある失敗
失敗①:「近所の人に来てもらう」だけを想定している 地方カフェの場合、近隣住民だけでは顧客数が頭打ちになります。観光客・ドライブ途中の人・遠方からのファンを取り込む設計も最初から考えておきましょう。
失敗②:SNSをやっているが更新が止まる 更新が途切れると「もう閉店したのか」と思われます。週1〜2回の更新を最低ラインとして、無理のない発信頻度を決めましょう。
FAQ
Q1. 集客のために最初にお金をかけるべきは何ですか? 最優先は写真の質です。プロカメラマンへの依頼費用(3〜5万円程度)は、予約サイトやSNSすべてに効いてきます。次点でウェブサイトの整備です。広告費は、まずオーガニックな集客(SNS・予約サイト・口コミ)を試してから検討することをお勧めします。
Q2. 事業を始めたばかりで口コミがゼロです。どうすればいいですか? 最初は知人・モニター客・地元の人に来てもらい、率直な感想を口コミとして投稿してもらうことが近道です。Googleマップの口コミ数は検索順位にも影響するため、開業初期に数件の口コミを集めることを意識してください。割引や特典との交換で口コミを強制することは規約違反になる場合があるため、自然なお願いにとどめましょう。
Q3. SNSのフォロワーが増えないのですが、集客に意味がありますか? フォロワー数よりも検索での見つけられやすさの方が集客に直結します。Instagramの場合、ハッシュタグや地名タグをきちんと設定することで、フォロワーゼロでも検索流入が生まれます。また、フォロワーが少なくてもGoogleマップからの来客は別のルートで発生するため、SNSだけが集客手段ではありません。
Q4. 予約サイトの手数料が高くて利益が出ません。どうすれば手数料を減らせますか? 予約サイトへの依存を下げるには、自社予約導線の整備が必要です。リピーター客や口コミで知った新規客には、自社サイト・LINEからの直接予約に誘導する仕組みを作ります。ただし、認知フェーズにある事業初期は予約サイトを活用した方がトータルの収益は高くなることが多いため、事業フェーズに合わせて判断してください。
Q5. 地方移住前に集客の見通しを立てるには何を調べればいいですか? 以下の3点を事前に調査することをお勧めします。①移住先エリアの観光客数・旅行需要のデータ(都道府県・市町村の観光統計)、②競合施設の予約状況(予約サイトの空き状況・口コミ数)、③移住先の自治体が提供する創業支援・補助金制度(内容や金額は自治体によって異なるため、必ず公式情報を確認してください)。
まとめ:地方事業の集客は「わざわざ来てもらう設計」が核心
地方移住して事業を始める場合、集客の基本的な考え方は「流れてくるお客さんを待つ」から「目的地として選んでもらう」に切り替えることです。
キャンプ場・古民家宿・カフェのいずれも、次の3ステップを順番に整えることで集客の土台が作れます。
- 予約サイト・Googleマップへの掲載整備(まず見つけてもらえる状態を作る)
- SNSでの継続発信(「行きたい」という気持ちを作り出す)
- リピーター設計(来た人をもう一度呼び戻す仕組みを作る)
この3つを同時にゼロから始めようとすると負担が大きくなります。まず①から着手し、①が安定したら②、そして③へと進める順番が現実的です。
集客に正解の型はありませんが、「地方ならでは」の体験を丁寧に言語化・可視化することが、すべての集客施策の土台になります。移住先の地域性や事業の個性を活かして、あなただけの集客ルートを作っていきましょう。
